観光乗数
マクロ経済からきている乗数という用語は、特定の経済地域にもたらされる外部からの収入から直接間接生じる経済効果の全体を表現するために使われる。乗数の概念は、経済への地域波及が大きい旅行産業に適用するのに相応しいと言える。
ただし、あらゆる場合に共通に適用するのに乗数と言うものは存在しない。乗数は企業の生産や売上、雇用、賃金、その他多くの変数について個別に推計されるものであり、表2が示すように、米港の来訪外客の経済効果を示す乗数は2.37、雇用効果は2.28、賃金効果は2.76となっている。
表2
売上高 518億ドル 2.37 1378億ドル
雇用創出 947900人 2.28 216万人
賃金 158億ドル 2.76 436億ドル
表3 国別観光乗数
アイルランド 1.776〜1.906
英国 1.683〜1.784
ドミニカ 1,195
アンティグア 0.0880
ケイマン諸島 0.650
また、乗数は全ての国や地域で同じと言うわけではなく、表3のようにそれぞれの地域の有する資源に左右される事を知っておく事を知る必要がある。例えば、資源の限られた島国では、旅行者の支出の50%以上Hが建築資材、繊維製品、食品等あらゆる種類の輸入品のために漏出し、従って乗数が小さくなってしまう。ドミニカやアンティグア、特にケイマン諸島の乗数が小さい点に留意して欲しい。
価格変動
商品やサービスの価格は需要と供給の条件によって変動する。例えば、生産コストが低ければ、低価格をつけることができる。また、高価格は需要の増加股は生産コストの上昇によって起こる。ホスト・コミュニティにおける旅行者の消費は、商品とサービスの需要増となって結果的に高価格を招く事になる。これがインフレを引き起こす原因になりとくに旅行者と住民がともに必要とする財やサービスの場合、住民も同じ高価格を支払わされる事になる。また、乗数効果によってコミュニティの所得が上昇し、住民もよりよい昇進やサービスを求めるようになれば、それ以外の財やサービスの価格も上がってゆくであろう。観光事業の発展によって生じる土地価格の上昇もインフレの主たる要因の一つである。景勝地にある好条件の土地がリゾートやレクリエーションやアトラクションの開発のために取得されると、とX費価格はその周辺の商業地や住宅地でも上昇する事になる。また、インフラの改善や建物の質の向上は、資産価値や課税対象額を上昇させ、それが結果的に消費者物価に跳ね返る事になる。
経済的不安定さ
可処分所得の支出項目である観光旅行は、旅行者の所得や旅行か価格の変動に左右されやすい。この強い変動性のために観光地の発展は不安定になりがちである。また、急逝長期から安定性長期へ、そして衰退期へと言う推移も、観光依存度の高い経済を不安定にする原因である。さらに、フィリピンの火山噴火、カリブ海を襲ったハリケーン、米国各地の洪水災害等の予測不能の自然災害がコミュニティを破壊し、その他何か好ましくない事件が発生すると、観光派敏感に反応し、ひいては地域経済を危機に追いやる結果にもなる。観光による経済にはもろさも同居しているのである
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