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特集1 あなたが旅行をする度にこれだけ世界に影響を与える  >>> 第3回 あなたが観光に行ったら現地の民衆の離婚率が高まっちゃった!!

社会に対する影響

雇用の創出と人口の流入
観光から発生する新しい雇用機会は、コミュニティの居住者だけに向けられるのではなく、地域外から人口流入をもたらす。その結果、新しい居住者がコミュニティに適応できるかどうかが問題となる。

よく知られた事例に、フィリピンのマニラに生じた状況がある。1970年代中期のマニラにホテル建設のラッシュが起きた時、人々が職を求めて押し寄せ爆発的な人口増を見た。元からの居住者も新参の労働者もともに職を求めて争い、従来からあった社会問題を悪化させることともに、さらに新たな社会問題を発生させた。このため政府は、首都圏人口の調整手段として身分証明書の所持を義務付けようとしたが、市民の反対デモなど大規模な抗議行動に遭い断念せざるを得なかった。

また、80年代の経済急成長の中国では、新しいホテルやリゾートが建設され始めた上海、北京、西安その他の都市部には田舎から何万人もの人口が押し寄せ、すでに過剰人口を抱えているこれら諸都市の社会問題を悪化させた。

人口増による社会的影響とは、新たに流入人口をいかに吸収するのか問題である。新参の住民の増加が急速であればあるほど、既存の社会構造にとって大きな重圧となる。また、観光が他の産業分野との間に雇用流動を生じさせている点も問題である。農業や漁業などの既存の産業分野にとって、労働者が観光産業で働く事を望み、報酬の少ない農業等を放棄してしまうようなことがあれば崩壊の危機をもたらす。

雇用の流動は、農業その他の伝統産業に依存してきたコミュニティ経済にとって大変危機なものである。観光産業が創出する雇用の多くは高度の熟練を要する仕事ではないが、観光地として線熟してゆくに従って、熟練を要する仕事や専門職も増える。そうした場合低位の仕事は簡単に埋められるが、特定の管理職や専門知識を要する職種は、当該コミュニティ内では調達困難と言うケースが多く、その結果給与のよい高度の職種であるほど外部の人に占められる傾向が強い。

コミュニティが観光の恩恵をフルに享受しようとするならば、責任者は地域住民でも高度の職種をつけるように教育訓練の機会を確保すべきである。この問題をないがしろにすると、コミュニティ側の不満が募り、ひいては政府の介入等が不可避となるであろう。

女性の役割の変化
近代工業社会では女性の職場進出は当然の事であるが、世界には女性が未だ社会に進出していない、依然として家事だけに従事している地域もある。旅行者が新しい観光地やまだ荒らされていない観光地を訪れるようになると、伝統的な社会構造や社会的価値観をそのまま残しているところまでが観光開発の対象になってくる。

そのようなコミュニティに観光客に開かれると、女性が初めて労働力として登場することになり、保守的な社会構造が動揺する。ハワイ島のマウナケア・ビーチのリゾート開発は、旧来型のコミュニティに観光が登場した場合に何が起こるかを示してくれている。心理学者のフランシス・コティントンと社会学者のメアリー・スミスが、マウナケアビーチリゾートに初めて雇用された多数の女性達を対象に調査し、その結果を公表しているのがそれである。

マウナケアビーチ・リゾートは。1960年代の後半にハワイ島のひなびた北コハラ地区の海岸にオープンしたデラックスなビーチリゾートである。当時島の経済はさとうきびとパインアップルのプランテーションが中心であった。マウナケアビーチ・リゾートがこの島の最初の観光産業であり、このリゾートがプランテーションの女性達に提供した雇用機会は、平穏な田舎のライフスタイルと課程の秩序に思わぬ緊張と軋轢を巻き起こした。興味深いのは、調査にあたった2人の学者が、コミュニティに生じた変化を全体としてプラスと見るかマイナスと見るかで正反対の結論を導いている事である。結果をネガティブと見るとコティントンはその理由として次のような項目を挙げている。

●働く女性の夫が自尊心を喪失している。妻の方が高い賃金を得るケースやプランテーションが閉鎖されて夫が失業し妻が唯一稼ぎ手となったりするケースがあるからである。

●妻がホテルで客をもてなすために美しく着飾る事に夫が嫉妬するようになった。

●離婚率が上昇し、犯罪や青少年の非行が増加した。

●客の高度な消費行動にさらされて自分の生活レベルも上がると錯覚するようになった。その結果、フラストレーションが溜まり、浪費して破産したりしている。

●初めて働く事からくるプレッシャーや仕事の責任の重さに対する不慣れや準備不足から女性の間に不安や病気が広がった。

他方、社会学者のスミスは3年後に出した報告書の中で、コティントンの観察を評価しながらも、ホテルがコミュニティに与えたカルチャーショックは始まりつつあり、むしろプラスの効果が負の効果を上回りつつあると結論している。その理由として次のようなものを挙げている。

●家計収入の増加が明らかに地域の生活水準を押し上げている。

●新しい業務知識の習得や報酬の増加が女性労働者に自分に対する価値意識と達成感を与えている。

●同僚の労働者や観光者との社会的接触の拡大によって、女性労働者の間に外部世界に対する知識が広がった。

●夫が妻のことを職を持つ有能な個人としてみるようになった。

●収入の増加と世界に目を開かれたことにより、労働者の子供が高等教育を受ける機会が増えた。

このように、女性の社会進出は当初はマイナス効果として現れても、長期的には女性にとっても家庭にとってもプラスであるように思われる。

消費行動への影響
社会学的観点からすると、観光者の消費行動が地域に及ぼす影響には良い綿と悪い綿の両方がある。事業がうまくいき、観光者の消費がもたらす収入の増加が地域の所得を増加させ、住民の生活水準が上がってくるのは良い面である。これに対し、住民が観光者の生活スタイルを真似しようとすると、それまでの価値観や消費行動が変化し、慎ましい消費から欲望の即時的充足に向かう。住民が地元の商品が輸入品に劣っていると考えるのに時間はかからず、結果として貯蓄の気持ちは薄れ、新しい消費生活維持のために借金までするようになる。

変化の諸段階
社会学的観点から見る観光地の発展過程は、観光地発展の理論を援用すると次の五段階を経る。@発見期A発展期B摩擦期C対決期D衰退期である。

発見期の段階では観光客の数は少なく、住民はまだ開発による影響を受けていない。

発展段階になると、観光消費が地域経済に目に見える効果をもたらすため、住民は観光開発を積極的に支持する。効果は観光客の消費や観光関連の雇用から来る所得の増加、インフラの改善等として認識される。しかし、一方で観光が発展すると、観光者が犯罪者や青少年非行の標的にされたりするケースも増える。

摩擦段階になって、初めて住民の怒りの気持ちが現れ、具体的には観光客に対して敵対的な態度を取るようになる。原因の多くは水やエネルギーの地域資源や土地の利用、海浜に面した不動産や娯楽施設の利用をめぐるものである。本来はゴルフ場、リクリエーション公園、ビーチ、マリーナなどの娯楽施設は、土地の集約的利用であり、空間地の確保や全体的な開発密度の軽減の手段として発想されたものだったのかもしれない。しかし、そういう施設から地域住民が締め出されたり、あるいは観光客のために設けられたリゾートが住民のレジャー利用を制限したりすると、問題が発生する。

対決期になると、問題がさらに浮き彫りになる。新開発や土地利用権をめぐるもめごと、他の資源の使用をめぐる争い等が組織的な対立に発展する。多くの国で、新しいリゾート開発進行中に貴重な水資源を巡って正面から観光と農業が対立する図式が見られた。

衰退期段階の兆候では、通常サボタージュや凶悪犯罪の発生、治安の悪化、資本の逃避と言った形で現れる。

最後の3つの段階はコミュニティの善意が称ひつして行く課程として認識される。ひとたびコミュニティの支持や善意がなくなってしまうと、不可能とはいわないまでも、これを取り戻すのは極めて困難である。観光の衰退を阻止または遅らせるためにはこうした変化の段階を理解し、社会的対応を計画的に行う必要がある。

その第一は、観光がコミュニティに与える社会的影響を調査し、調査によって得られた情報を利用して、負の影響を阻止し、正の影響を拡大するための行動計画を立てることである。社会計画は、新規の観光開発であれ成熟した観光地であれ、発展の全ての段階において必要である。成熟した観光地は、飽和状態に陥ると客の減少が始まり、新規投資は期待できなくなって衰退に陥りやすい。この時点での社会計画は、必ず成功しているとはいえないが観光地の衰退を止めることに全力をあげるべきである。地域住民の怒りは様々な形を取って現れる。労働面では労働者のモラルの低下、生産性の低下、サービスの悪化、欠勤、遅刻、ストライキなどが見られる。一般的には、観光産業が地域の支えを失い、政治家は観光の発展に背を向け、観光宣伝の予算を削減したり、観光にマイナスの立法さえ行われるかもしれない。これらはどれも観光地の質や評判、ひいては収益性に影響するものである。

カリスマ旅行士ドットコム 代表 ASTER
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